はるばる、奈良へ。

『遥遥』の原画巡回展、奈良へ。

会場の空櫁さんは、イケダユーコさんと小鳩ケンタさんが絵と詩のやりとりした作品がはじめて生まれた場所。だから御礼参りの気持ちを込めて、この場所で『遥遥』をみていただきたかったのです。

空櫁さんに訪れるたび、なんて豊かな場所なのだろうと思います。
原画設営で訪れたその日は暑い暑い猛暑日、ゆるやかな坂道を歩いて、汗を垂らしながら空櫁さんへたどり着くと、店主の五井さんが庭で採れたレモングラスでつくったというハーブウォーターを出してくれました。清々しい風味が喉を通り抜けると、暑さで弱った身体が生き返る。開けっ放しの窓を行き交う空気、扇風機の優しい風、店の中まで木漏れ日が広がったような光、汗が引いていくのを待ちながら、やっぱりこんな日も「なんて豊かな場所なのだろう」と思いました。冷たいハーブウォーターは心の芯まで染み込んでいきました。

写真のスイーツは、出張喫茶をしてくれた兵庫県川西市にあるお菓子とコーヒー研究室 ハマ・ノ・テlaboさんの『遥遥プレート』。
ちょっと大人の雰囲気でつくってくれた焼菓子ももちろん美味しかったのだけど、なにより感動したのはコーヒーゼリー。コーヒーなのに苦味を感じさせないすっきりと軽やかなゼリー、その上には独特の甘みのラム酒のシロップがかかっている。なんて大人な味! 大げさではなく、生まれて初めて食べたコーヒーゼリーでした。この日のための特別メニューなのだそう。ハマノテさん、本当にありがとうございました。

場所が違えば、同じ作品でも感じ方が変わるんだなあと改めて思いました。

それに今回は空間の雰囲気をみながら感覚的に作品を展示しました。たとえば、五井さんが無造作に床に並べていた陶器の瓶を見て「この横に作品を並べよう!」と決めて。それから残りの作品の居場所をあれこれしながら少しずつ決めていきました。
そうして徳島とはまた違った遥遥の展示空間が出来上がりました。

今回の巡回展では、絵と詩の新作もいくつか出品しました。

この新作づくりは、徳島での展示で3人が集まったとき「今までみんながやりたいと思っていたことをやってみよう」という話になって決まりました。イケダさんと小鳩さんが「絵と詩をひとつの額に収めた作品をつくってみたい」と思っていたこと、わたしが「オリジナルの額をつくってみたい」と思っていたこと、それを形にしたのが今回の新作たちです。

絵から生まれた詩、詩から生まれた絵、それぞれの作品に合うよう額装をデザインし、遥遥3人でつくりあげた作品となりました。

空櫁さんにみんなで在廊した最後の日、五井さんが店の営業の合間を縫って、店の奥にある竃でごはんを炊き、素晴らしい夕食をつくってもてなしてくれました。その素敵女子っぷりに、同い年ながら尊敬と憧れが止みません。本当に豊かな食卓、感動的な時間をありがとうございました。

器、道具、日々の暮らしのなかで使える美しいものたちを愛して止まない空櫁、五井さん。店で取り扱われているひとつひとつのものに、五井さんの思いがあることはすぐわかります。ああ、なんて豊かな場所。

この場所で展示ができた『遥遥』は幸せ者です。

空櫁さん、本当にありがとうございました!

2019-08-24|
関連記事