先日の記事もそうだったように、わたしは本に出会うとついつい「つくり手」のことを気にしてしまうようです。作家、ライター、グラフィックデザイナー、出版社、印刷所、、、この一冊が出来上がるまでにかけられた人の手のことを。わたしの前職はタウン誌の編集者だったので、毎月雑誌を生み出す側だったということも大きく関係しているのかもしれないと思う。本づくりに関わる人を応援したいという気持ちが、わたしの店(utanotane)で本を扱っていた理由でもあります。

わたしがタウン誌の編集者をしていた頃、「街」を見て伝えることが仕事だったので、「街」への取材の仕方や「街」に対する視点の持ち方は毎月いろいろと考えていました。そのために影響を与えられた雑誌や書籍はいくつかあるのだけれど、そのうちの一冊が高知県で出会った『高知遺産』という本でした。

大学を卒業し、徳島へ戻ってきて間も無くだったと思う。アートギャラリー graffiti を目的地に高知を訪れたときのこと。ユニークな展示企画をしていたり、アートブックの販売もあったり、高知のアートシーンの情報発信もしていたりと、「こんな風なことを自分でもやりたい!」と思った場所。そんなアートギャラリーgraffiti で買って帰ったのが『高知遺産』。高知に暮らす人たちがそれぞれの視点で選んだ「遺産」だと思う場所を掲載している自費出版本。それは独特の視点だった。偏愛に満ちていて、高知という街が一人ひとりに愛されていることをとても羨ましく思った。(影響を受けた本なのだけど、残念なことに誰だったかに貸したまま返ってきてないので手元にありません、、)

その後、不思議と『高知遺産』を手がけていたタケムラさん(タケムラデザインアンドプランニング)と繋がりができて、一緒にメンバーの一人としてウエブマガジン四国大陸をすることになった。当時は点のような出会いでも、振り返ると人生のなかで繋がっていってたことってけっこうあるのかもしれないなあと改めて思う。

さて、ようやくこの記事の本題なのですが、そんな『高知遺産』をつくったタケムラさんが編集とデザインを手がけた新刊『マッチと街。』、これがとても良いのです。

■「マッチと街」ネット書店 https://matchkochi.thebase.in/

1950年から90年にかけて高知の街で実際に使われていた1000個以上ものマッチを系統だてて紹介した一冊。2009年にアートギャラリーgraffitiにて開催した同名の企画で展示されたマッチをまとめたものなのだそう。貴重なマッチのデザインのコレクションとしても面白いのだけど、喫茶やスナック、居酒屋など、当時の高知の街の活気がマッチたちから漂ってきて、街に根付いた文化の深さも感じられる。店の営みや人の暮らしと文化が、マッチから読み取れていくなんて。読み進めるごとに、高知の面白さと奥深さにもはまっていく一冊だった。

高知が持つ「熱」を再起させるような想い溢れる編集で、この一冊もまた『高知遺産』と並び、高知への愛に満ちた本。「あの頃が羨ましい」と帯に書いてあるけれど、わたしはこの本が生まれた高知が羨ましい。

徳島はどうなのだろう。こんなにも個性あふれるマッチが徳島の街にもあったんだろうか。
これまでとはまた違った視点で徳島の街を歩いてみたくなりました。

2019-01-25|タグ:
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